平成29年5月17日(水)第5回高次脳機能障害検討会を開催しました。
今回は受傷から一年半が経過した、外傷性の成人高次脳機能障害の方の事例検討となりました。行政や関係機関の支援員の方々や家族に高次脳機能障害を持つ家族会の方々、医療機関、福祉機関、教育機関関係者など24名の参加がありました。
今回の相談は、ご家族からのものです。主な相談内容としては、「本人が新しい環境(デイケア)への移行に納得できないため新しい環境への調整が進まない」とのことでした。
失語症と視野の障害がある方で、情報の入力や理解に制限があることが考えられたため、アドバイスとしては、1.実際に新しい環境を見学・体験し、本人が具体的な予測が立つようにする。2.情報の提示方法を工夫する、3.スモールステップで進めていく(内容や時間など)、4.具体的な生活の目標を本人と共有するなどがあげられました。
アドバイスの主な理由としては、失語症の方は、言語からの情報収集が苦手なため、視覚から状況判断をされている方が多いようですが、本事例の方は、視野の障害があるため、視覚からの状況判断も十分ではなく、状況の変化に対する不安が強い状況でした。そこで、本人が理解しやすいように情報提示方法を工夫したうえで、スモールステップで進めていくとよいのではないかとの意見があげられました。具体的には、リハビリの内容と場所(環境)を同時に変えるのではなく、場所(環境)のみを変化させた後に、環境に慣れてきたころにリハビリの内容を変化するというように、通常であれば、リハビリの場所が変われば内容も変化するものですが、そこを細分化しご本人の受け入れられる変化の範囲を考慮したものです。また、「何のためにリハビリを続けるのか」というところが議題となり、リハビリのためのリハビリではなく、活動に焦点を当てることで、本人と目標を共有できるのではないかととの意見があがりました。
高次脳機能障害の後遺症がありながら地域で暮らす方には、当事者だけでなくその家族の生活があります。これまでのデイケアへの通所が出来なくなるということは、これまでの日常が、本人にとっても家族にとっても変わってしまう大変大きな出来事となります。今回の事例では、環境の変化を円滑に進めるために、ご本人のみならず、ご家族、ケアマネ―ジャーや新施設のスタッフなど、すでに多くの方々の協力がありました。特に、ご家族は本人と行政や施設との調整までされており、大変熱心に関わられていらっしゃいました。このように、すでに多くの方が協力されている事例でも、相談いただくことで、関係機関の方々や行政・教育・福祉・医療など様々な業種の方が集えば、何かしらのアイディアや新しい視点が生まれてくる可能性があります。それぞれの領域での成功例や考え方を学ぶことが出来て、スタッフ側も大変貴重な機会となりました。
この会では、相談がある方の関係機関の方々に可能な限り参加いただき、顔と顔をつき合わせて話し合うことが出来るとよいのではないかと思っております。是非お気軽にご相談ください。
大人とこどもの高次脳機能障害を考える会いばらき
高次脳機能障害は交通事故などによる頭部外傷や脳の疾患により脳を損傷して生じる障害です。脳の損傷した年齢によって子供にも大人にも存在します。高次脳機能障害の方は日常生活の中でさまざまな不都合や暮らしにくさに直面します。学校や友人関係、学校卒業後の就職などにも困る場合があります。当会では、ご本人やご家族の抱える困難を、病院・学校・行政・就労先などさまざまな方面から一緒に考えていきたいと思います。
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